風の丘めぐみ保育園では、遊びと暮らしを中心に保育をしています。子どもたちは一日中遊んでいます。保育者がリードしたり、大人と一緒にやることももちろんあります。それも含めて子どもたちは遊んでいるのだと思います。
遊んでいる姿をよく見ていると、子ども一人ひとりがやりたいことを見つけ、集中して、時には仲間と共に遊ぶ中で、様々なことに気づき、工夫し、上手くいくまでやり遂げようとする姿が見られます。
例えば虫が大好きな子がいます。一目見ただけで、バッタの種類やオスメスの区別が言えたりします。自分がすでに知っている種類と違うときに気づきがあります。どこが違うのか、わからなければ大人に聞いたり図鑑で調べたりします。捕り方の工夫や、捕った後には飼うこともあります。何を食べるのか、図鑑に書いてあることだけですべてが上手くいくわけではないことに気づき、なんでだろう、どうしたらいいだろうと考えます。こんなこと、やらせてできるものではありません。
遊びが大事なことの1つの要因は、子ども自身がやりたいことだということです。つまり、自分がやりたい遊びはモチベーションが高いのです。好奇心も高まり、知りたくもなり、上手くやりたくもなるのです。
子どもが何かをおもしろがっていたとしたら、そこには学びに繋がることが必ずあります。学びの芽とでも言えるようなものです。
私たちは「おもしろいを おもしろがる」を保育のテーマとしています。
子どもがおもしろがっていることを一緒におもしろがれる保育者であるか。
そして、子どもがおもしろがっているとき、遊んでいるときに見せる姿は、表現する言葉さえあれば、豊かな学びがあることがお伝えできると思います。
それを伝えようとすることが私たち風の丘めぐみ保育園の保育者のありたい姿であり、目指す保育の専門性でもあります。
風の丘めぐみ保育園では、子どもたちの育ちや成長の過程を大切にしたいと考えています。
それは遊びや暮らしを中心にした保育を行う上でも重要です。
大人が見たい姿だけが見られるように子どもを仕向けることを目指してはいません。
保育者が丁寧に関わることで、子どもたちの変化する遊びを支え見守ります。
遊びたくなるような環境をつくることで、子どもたちがやりたいことを見つけ、選び取ることを促します。
子どもがおもしろがっていることを、共におもしろがる中で、
子どもの気づきや工夫、やり遂げようとする姿、子ども同士の関わりなどを記録し、それらを基に次の保育を考えます。目指したいのはこちらです。
発表会などこの日こそいい姿を見たいと思ってしまう、その一日だけを結果としないとも言えます。
行事があってもそれも過程の一部です。
何気ない一日のようでも、
成果が見えないとしても
その過程をおもしろがっている子どもたちがいることに
常に目を向けて保育をしていきたいと思います。
風の丘めぐみ保育園は世田谷区の代田という閑静な住宅街にありますが、すぐ近くには、世田谷区立羽根木公園があります。梅まつりも開催されるほど梅もたくさんありますが、それ以外も多様な樹種がみられ、森にくらすの「もり」のイメージは羽根木公園そのものでもあったりします。
また公園内には子どもたちの遊びを保障する羽根木プレーパークもあり、自然に囲まれ、泥だらけになっても気にすることなく、夢中になって遊んでほしいと願っています。
たとえ園庭が小さくても、立派な公園がなくても、子どもたちが自然とふれあうことはとても重要です。
庭でサツマイモを育てるとします。
苗を植える前には、土作りをします。
水をまけばドロドロになります。
苗を植えるときには手にアクがついたりもします。
水をあげなければ元気がなくなります。
そっと葉っぱに触れると表面の感触を感じることができます。
毎日水をあげてもすぐには大きくなりません。
ふとしたときに大きくなったことを実感します。
そろそろ収穫です。
プランターや小さな庭だとしても、掘るのが大変だったり、手で掘ったり、
その間にいろんな感触があります。
このいろんな体験一つひとつに、いろんな感覚と感触がついてきます。
植物の種類が違うと、それらは全く違う感触になります。
さらに触れる触覚以外の五感をフルに使うことで、感覚の情報も増えます。
大事なことは、小さいうちからいろんな体験と、いろんな感覚や感触に出会うことです。
大人になって初めて出会うと、それらの多くが不安や、不快としてしか感じられなくなってしまいます。
遊びを中心として保育をしていると、子どもたちが怪我をすることがあります。
大事なことなので最初にお断りしておくと、風の丘めぐみ保育園では怪我をさせたいわけではありませんが、怪我をさせないために子どもたちを制限することには注意を払っています。
大きな怪我をするのは、避ける必要があります。
そのために、危険なものを事前にどけたり、子どもの発達を勘案して個別に注意を促したり、もちろん制止することだってあります。
ですが、転んだりぶつかったりすること、小さい子どもが思わず噛んでしまったりすることをしない環境というのは、子どもが思うように動くことができず、子ども同士が関わることができない環境とも言えます。
子どもがやりたいと思うことを、可能な限りやらせたい。
さらには、命令や禁止することなく、過ごせるようにするには
私たち保育者がどのように関わればいいのかをいつも考えています。
小さな怪我をすることで、子ども自らが何が危険かを察知し、それを避けることができるようになります。
また、ケンカも大事な育ちの機会だと捉えています。
ケンカは友だち同士でしかおきません。
できる相手、関係性ができて初めて、ケンカになります。
乳幼児期は上手くいく体験だけでなく、上手くいかない体験もたくさんすることが大事です。
喜怒哀楽も含め、様々な感情をしっかりと経験してほしいですし、感情を針で例えると、振れ幅を大きくする経験をしてほしいと思っています。
どんな感情も大きく振れることがあっても、いずれ落ち着いていきます。
ケンカをして感情が高まっていて、ごめんが言えないときもあります。
無理にその時に言えなくてもきっと言えるときが来ます。
その時間をしっかり待てる保育がしたいと思います。
大人はあっては困ることをできるだけ避けます。
それが上手く生きることです。
子どもは困ることもたくさん経験するなかで
いずれ困ることを避けるようになっていくのです。